はなしにならないはなし17

Vol.17 「歯の新入生」

新しい年度が始まりました。

入学や進学、新社会人や新しく仕事をはじめた方、新たなステップを踏んだ方も多いと思います。

人間の歯も、乳歯を卒業し永久歯に進んでいきます。この卒業、入学の時機、つまり生え替わりのタイミングがずれると、いろいろな弊害が生じてきます。

乳歯には、食べ物を噛むという働き以外に、永久歯の生える位置を保つという役割があります。つまり、お花見の席取りのようなもので、途中でいなくなってしまうと、あとで指定の場所に永久歯が座れなくなるのです。

最初に生える永久歯の第一大臼歯(一番大きな奥歯)は、第二乳臼歯(一番奥にある乳歯)のさらに奥に生えてきますので、ひどいムシ歯で抜くことになると、第一大臼歯の生える位置が変わってしまいます。そうなると、大人の歯並び噛み合わせは、この歯が基準になりますので、生涯苦労することとなります。

乳歯の卒業が早すぎるのも困りますが、逆に遅いのもよくありません。

乳歯は後に続く永久歯が生え始めると、自然に根が吸収してグラグラになり、抜けるようにできています。しかし、ムシ歯で乳歯の神経をとる処置をしたり、強くぶつけたりすると、このメカニズムが壊れ、永久歯が生えてきても居座ってしまいます。

こうなると、永久歯はこの乳歯を避けるように、別の場所に生えてしまいます。生えてすぐでしたら、邪魔をしている乳歯を歯医者さんで取ってもらえば、永久歯はある程度本来の場所に戻るはずです。

乳歯が抜け後に続く永久歯に生え替わる時機が、それぞれ何歳頃かは、学校や歯医者さんで聞いたことがあると思います。ご自分のお子さんがこのタイミングとずれていたり、よそのお子さんより遅かったりすると、すごく心配される保護者の方がみえますが、基準値はあくまで平均的なものですので、あまり気にすることはないと思います。心配でしたら、歯医者さんでレントゲン写真を撮ってもらえば、乳歯に異常がある場合や、永久歯が先天的に失われているケースはすぐにわかります。

鮫などの一部の動物は、何層にも歯が埋まっていて、歯が何度も生え替わりをしますが、残念ながら人間には、乳歯と永久歯の2種類しかありません。

乳歯が卒業しても永久歯が入学しますが、永久歯は卒業すると新入生はいません。

一生卒業しないよう、毎日のお手入れと定期的な検診を欠かさないようにし、それでも卒業した永久歯があれば、すぐに歯医者さんで入れ歯やインプラントの転校生を入学してもらいましょう。

毎日が新しい年度のように爽やかにいきたいですね。