はなしにならないはなし13

Vol.13 「痛みでわかるムシ歯の進行」

お鍋のおいしい季節になりました。熱々の鍋料理をいただき、冷えたビールを飲むと幸せを感じます。

私たちは日常、熱いものや冷たいもの、辛いもの酸っぱいもの甘いものと様々なものをお口の中に入れます。もしその時、歯がしみたり痛みを感じたりすれば、その物の種類により病気(ムシ歯や歯周病など)の状態や進行具合をある程度知ることができます。

冷たいもので痛みを感じるのは、どちらかといえば軽症です。歯の神経(正式には歯髄といいます)が冷たいものに反応するのは、神経がまだ生きていて、初期の炎症を起こしている場合が多いのです。この時期に早めに治療を行なうと、神経がまだムシ歯に感染していなければ、神経を取らずに治すことが可能です。

ムシ歯が原因ではなく冷たいものにしみることもあります。過激な歯磨きや良くない咬み合わせにより、歯の生えぎわのエナメル質が削れてしまったり、歯周病が進行して骨や歯ぐきが退縮し、敏感な歯の根っこの面が露出したりしても、冷たいものに感じるようになります。この状態・知覚過敏症には、刺激を受けて炎症を起こした神経を静める薬を塗ったり、歯の表面の細かい穴を埋めたり、削れた部分にプラスチックなどを詰めたりして治します。

熱いものがしみるのは、どちらかというと重症です。ムシ歯が進行し神経が感染して腐っていくと、熱いものや甘いものに反応して痛みを感じるようになります。そのまま放っておくと腐敗はどんどん進み、歯の根の先の骨までムシ歯菌に侵されていきます。ひどくなると歯を抜かなければならないので、早めに歯の神経と根の治療が必要です。

このように神経が腐っていって完全に死んでしまうと、一時的に症状がなくなりますが、ムシ歯が治ったのではなくもっとひどくなっている訳です。自己判断は危険です。

ムシ歯菌が根の先端の骨まで進出すると、噛むと響いたり、朝起きた時に歯が浮くような感じがします。また根が植わっている部分の歯ぐきを押すと痛みを感じたり、歯ぐきに膿の出口ができて腫れたりします。こういう状態でも早めに治療すれば、歯を抜かずに治ることもあります。

自己判断はあくまでもひとつの目安に過ぎません。悲観的な方はどうしても大げさに考え、楽観的な人は安易な判断をしがちです。健康な歯を保つには、やはり日頃のお手入れと、歯医者さんでの定期的な検診が欠かせません。