はなしにならないはなし16

Vol.16 「スポーツとマウスピース」

プロ野球選手のバッターは、打つ時に歯を食いしばるために、奥歯がぼろぼろになるという話を聞いたことがあります。

スポーツをする時だけではなく、私たちは力を入れる時に、奥歯をかみしめます。この時、奥歯全体には、平均で70kg前後、人によっては100kg以上の力が加わるそうです。逆に、歯が欠けていたり、ムシ歯や歯周病になっていると、奥歯でかみしめず力も入りません。

私の診療所に通っていた患者さんで、ゴルフをなさる方が、奥歯が欠けていたので入れ歯を入れたところ、以前より20ヤード飛ぶようになったそうです。クラブ競技会の予選をなかなか通らなかったのが、入れ歯が完成すると、準決勝まで進んだそうで、大変喜ばれました。

スポーツをする時、力を入れる時に、筋肉の働きを最大限に引き出すためには、健康な歯やぴったり合った入れ歯で、しっかりと咬めるということが、必要になるわけです。この時、くいしばった歯がぼろぼろにならないよう保護するために、マウスピースを装着することをお薦めします。

通常は上顎の歯に、柔らかいプラスチックでできたマウスピースをつけ、クッションの役割をさせることで、強いくいしばりの力から歯や顎の関節を守ります。はずしている時は、乾燥しないように、水の中に入れておくといいでしょう。

マウスピースにはさらに、ボクシングなどの格闘技で、相手からの顔面への打撃のダメージを和らげる作用があります。ボクシングや空手だけではなく、ラグビーやサッカーなどのスポーツをする時にも、けがの予防に、マウスピースをつけた方がいいでしょう。

もうひとつ、マウスピースには筋肉の働きを、最大限に引き出す効果があります。

特殊な器械を使い、いろいろな咬み合わせの位置で咬んで、体中の筋肉の働きを測定してみます。すると、普段ものを噛んでいる時と違う咬みかたの時に、最高の筋力を示すことがあります。その位置を記録しておき、その場所で強制的に咬み合うように、顎の位置を固定するマウスピースを使用すると、いちばん力が出ることになります。

マウスピースは、スポーツ用品店で安く手に入りますが、オーダーメイドではありませんので、使い心地が悪く効果も少ないことがあります。スポーツ歯科を扱う歯医者さんで、型を取って、ピッタリしたものを作る方がいいと思います。

いいマウスピースで、安全に、楽しくスポーツしたいですね。